2017年6月18日 東京都在住/N.Oさん/フライ歴28年/40歳の”初体験”


"Duffy's FLAT"

川土手に捨てられたダッフィーが鎮座していた干潟を、こう呼んでいた。



苦節5年。

長いドラマだった。




2012年。


浜名湖で杉浦さんの釣りを見て、脳天から電流が突き抜けた。

その後、浜名湖で釣りをして1枚釣れて、

膝が笑い、脳みそが溶けた。


身近でなんとかならないものかと、試行錯誤が始まった。

当初の目標は、あくまでもチヌ(クロダイ)のサイトフィッシングだった。



2013年から、私のフライフィッシングのスケジュールが一変する。

東北の渓流ではなく、多摩川河口のフラットで過ごす日々。


フラットと言えば聞こえは良いが、

”干潟”

フライフィッシングと言えば聞こえは良いが

良い歳こいた

”泥遊び”




私の出身は広島。

子供の頃の海釣りの憧れの対象と言えば”チヌ”。

実際、広島の河口にはチヌがウジャウジャいたから、

”多摩川の河口にもいるはずだ!”

そんな漠然とした状態からスタート。

週末の午前中に干潮を迎える潮回りの日の、ほぼ全てを干潟で迎えた。

干潮前後の2〜3時間だけ。


日常的に通える範囲でフィールドに立てるし観察ができる。

そして何より家族にかける負担も少ない。


最初に向かった日のこと。




「死にたて」のチヌを見つけて興奮した。

(写真は別のもの。もっとフレッシュで水面を浮いて流れていた)

「いる」。 と言う絶対的な情報だった。


浜名湖のごとくサイトフィッシングで成立させたく、

ルアーでシーバスを追っていた頃の記憶を頼りに、

干潮時に立ち込める場所を探し歩き、魚を探す日々を送る。




2年目以降も同様に開拓の日々。 真夏の日中の干潟。

周りは野球場や高層マンションが立ち並ぶ都会の川。 それでも多摩川は干潟があり、そこには脈々と続く生物の営みがある。 シーバスのボイル祭り。

アミ類の大発生。

植物プランクトンのブルーミング。 潮の満ち引きの中に突然訪れる生命のザワつきがあることに、改めて気が付いた。 この感覚もまた、たまらない。




2016年6月。

広島に帰省したおり、フライタックルを持ち込んだ。

テイリングもナーバスウォーターもたっぷりだけど、

ただ、岩場やカキ殻が多くて釣りにならない。

休憩がてら橋から覗き込むと、岩場はもちろん干潟のカケアガリにも、

多くのチヌが餌を食んでる姿が見えた。

浜名湖とその他の釣り場との大きな違いはボトムの色。

浜名湖以外はいわゆる干潟で”黒い”。

故にテイリングやナーバスウォーター以外、魚を見つけることは難しい。

これだけ沖にもチヌがいれば、ブラインドでもチャンスがあると思った。

ここまでサイトに固執し過ぎた感がある。


予想は的中。

潮のタイミングがあえば、結構アタる。

浜名湖のサイトフィッシングで経験した

”ドドッ、ドドドッ”のあのアタリが、いきなり訪れる。

サイトは挙動が見える事が何より面白いけど、

いきなり訪れるあのアタリも心臓に悪くて良いもんだ。

広島のチヌがデカく、散々ハリを折られティペットを切られ、辛酸を舐めさせられる。

釣り人の欲を捨て、小さくても良いから!と腹をくくって、

ブラインドでの最初の一枚をキャッチした時は、

ものすごく満足感に満ちた喜びを得た。




多摩川に戻る。

これまでサイトに固執し過ぎた感がある。

フィールドの特性上サイトフィッシングには向かないことに、

遅ればせながら気づいたのだ。

2016年の夏からは、起伏や流れを意識してブラインドでの釣りも始める。



”ドドッ、ドドドッ”

あのアタリが訪れる。



そしてアタリの再現性を追求するために、

潮の条件などを、数名の仲間とともに探っていく毎日。





2017年はいつもより早い時期から始めた。

5月中でも少ないながらアタリは取れた。

食いそうな潮と川の流れがなんとなく掴める。

そして2017年6月18日。

カケアガリにフライが差し掛かったテンションが分かり、

そのテンションが解けた瞬間、

”ドドッ、ドドドッ”。

いちどフライを放すも、再びドドドッときてフッキング。

ガバガバっと水面を掻き回し、一瞬のテンションを感じたのちバレる…。




気を取り直し、そこから数投。

また同じ様なアタリ。

今度はフッキングが決まり、ファイト開始。

沖へと走り、ラインが水中に突き刺さる。 ギラギラと魚体が見える。凄まじい体高の魚が暴れ狂い、

私は無我夢中でズリ上げた。

ドラマが完結した。




見事なコンディションのキビレ。 クロダイではないけれど、紛れもないチヌファミリー。

銀ピカボディに尾鰭の黄色がアクセント。

フライは閂を貫いていた。




6月18日はキビレ記念日となった。



この日までの5年間。

全く釣れなかったのに、ここから先ほぼ毎回釣れるようになる。 やっていることは大して変わらないのにだ。

しかし、なかなかクロダイは釣れない。

当初、クロダイのサイトフィッシングに対してのこだわりが強かったのだけど、

ここではギンギラギンのキビレがスターなのだと納得する。


ここのキビレはとにかく引く。

そしてどれもコンディションが素晴らしい。


日中の多摩川河口でフライロッドを振っているのはほぼボクだけ。

羽田空港を行き交う飛行機の下でロッドを振るのは、気持ちが良かった。

ここまでの”5年間”と言う時間の苦労を、

最初の1匹が全て満たしてくれただけでなく、

”身近なフィールドを再開拓すること”が、

釣りの楽しみの大切な部分だと気づかせてくれた。

そして、ここで釣れるシーバスやマルタも全て本命だと思えるようになった。




「ちょっと釣りに行ってくる」

と言う時の「釣り」がフライフィッシングで、

しかも街中できれいな魚が釣れるのはなんとも嬉しい。

ここから私は、この楽しさを共有したいと思うようになり、

周りの人に声をかけ始めた。

そして、東京の干潟が”フライフィッシングフィールドとなっていくのだった。






ROD:Scott Meridian 908<Scott/Maverick> REEL:SS 7/8/9<TEAL original> LINE:Textured Grand Slam WF-8F <Scientific Anglers/TIEMCO

LEADER:VARIVAS Tapered Leader All PurposeFluoro Carbon -02X 9ft<MORRIS

TIPPET:Seaguer Grand Max FX 3号 4ft<KUREHA






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